2010年10月22日金曜日

鉄少メモ001

成層圏プラットホームにもそろそろ飽きてきたので新しい、というか古いネタを引っ張り出してリニューアルを敢行するのである。

NCブログでちょっと公開した『鉄道少女隊』というヤツなんだが、基本設定をいじくって再出発しようと思うのだ。

とりあえず、現時点での基本的な設定を掲載しておこう。


・鉄道少女隊世界設定

 この物語の部隊となる世界は、地理歴史とも現在の世界とほぼ同じである。
 時代は一次大戦直後から二次大戦直前までの、いわゆる戦間期に当たる。
 これより少し前の時代、先進地域である欧州で各国が競うように国家事業としての物流インフラに注力し、その成果である巨大な鉄道網による活発な物流が国家の旺盛な経済発展の支えとなっていた。
 しかし、拡大する各国の経済活動が国境を越えて衝突するようになると、各地で地域紛争が絶えない時代となり、紛争国同士による互いの鉄道の封鎖や破壊により鉄道の運行に支障をきたすようになってしまった。
 このため、特に港湾を持たない内陸国家では経済の疲弊が激しく、海運によって最低限の物流を確保することができた沿岸国家でも、内陸国家との物流量が激減したことによる経済活動の低下は無視できるものではなくなっていた。
 紛争が長期化してきた頃、これら疲弊した国家の一部では、鉄道を共同運営することにより、紛争が発生しても一定の物流が確保できるように事態を改善しようとする動きが始まった。
 これらの国家間では国際鉄道委員会とよばれる超国家的組織が設置され、各国は国家のインフラとして整備されてきた鉄道を国際鉄道委員会に委譲することで、委員会が国家の思惑に左右されることなく独自の裁量で鉄道の経営をおこない、国家間の紛争が物流に影響することを防ぐことを考えた。巨大な植民地や領土を保有し、その経済圏内で自給を可能とする大国は知らず、国外との物流が経済の死命を決する小国にとって、紛争に影響されない経済活動は、たとえ紛争当事国であっても歓迎すべきことであった。要するに、経済面での相互安全保障を実現するために、物流網から国家の影響を排除する仕組みを形成したのである。
 これに、地中海貿易の復権による大国化を目指すイタリア、スエズ運河を利用して英国の海上貿易支配を崩そうと考えるフランスが便乗し、紛争による封鎖に最も影響を受ける内陸国であり、永世中立であるスイス連邦を中心にして国際鉄道委員会を設立するための事前会議が召集されることとなった。この会議によって、国家ごとによってバラバラな鉄道の規格を統一して円滑な国際物流を実現するための連絡調整機関であった欧州鉄道会議を母体として、国際鉄道委員会(設立当初は欧州鉄道委員会であった)の設立が宣言されたのである。
 そして1905年、イタリア-スイス間にシンプロントンネルが開通したことを以って、国際鉄道委員会の本格的な活動が開始される。国際鉄道委員会の管理下にある鉄道路線とその沿線では、紛争下であっても貨物取り扱い量の減少を最低限に抑えることに成功し、加盟国の経済も設立以前の水準を回復し、さらに発展を見せるまでになった。
 この成功は他の国家を刺激し、国際鉄道委員会への加盟を求める国家が増加していった。そして、いつしか国際鉄道委員会は欧州だけでなく他の地域の国家までもを呑み込む巨大組織へと成長したのである。
 この物語は、このような時代背景において、国際鉄道委員会に加盟したばかりの極東の新興国出身の少女が、国際鉄道委員会の保安局員として世界をめぐる冒険へ旅立つところから始まる。


※入院中の父親が壊れつつある。←10月22日

※父危篤の報あり。←10月25日

※今夜が池田ァァッ! ちが、山だ。←10月26日

※10月27日午前3時30分、永眠。

※10月28日通夜。

※10月29日本葬。

2010年10月17日日曜日

ネタメモ005(往還機)

さて、ようやく往還機にたどり着いたぞ。

往還機を考える時に問題となるのが、大気中と宇宙空間という、大きく異なった2つの環境下で動作させなければならないということ。そして、それを解決した上で、運用コストを如何に引き下げるかということだ。

大気中を飛行する航空機は大気を様々な形で利用して飛んでいる。しかし、宇宙空間ではそれを利用することはできない。

具体的に言うと、重力に逆らって機体を空中に浮かせる揚力と、内燃機関(レシプロ機関だけでなくジェット機関も内燃機関に含まれるぞ)を動作させるのに必要な酸素だ。

宇宙空間で動作するロケット機関もやはり内燃機関の一種であるが、酸素のない宇宙空間で動作させるために、大量の酸素を固体や液体の形で持っている。打ち上げ時に大気中を飛行している最中でも、外部からの酸素供給を受けずに、自前の酸素で動いているのだ。つまり、大気中の酸素が利用できれば持っていかなくてもいい重量を持ち上げているということだ。
これは、酸素のない宇宙空間だけでなく、地球の重力を振り切るのに必要な超高速(およそ時速28000km≒マッハ22)で確実に動作するジェット機関が存在しないためだ。
そこで現在、酸素を利用できる機関として、スクラムジェットという機関が研究されている。これが実用化されれば、大気圏を脱出するまでの分の酸素は持たなくてもよくなるため、重量の大幅軽減ができることになる。つまり、同じ重量を宇宙に打ち上げるのであれば、より低出力な機関で可能性になるわけだ。機関は出力が大きくなるほど製造やメンテナンス、消費燃料などのコストが増大する傾向にある。スクラムジェットは運用の低コスト化には必須の技術だといえるだろう。

だがしかし、スクラムジェットにも問題がある。
とりあえず、実用のための技術的問題が解決されたとしよう。しかし、スクラムジェットの動作速度領域はマッハ5~15とされている。マッハ15以上はおそらく酸素を利用できない高度になるため、旧来のロケット機関になるから(デッドウェイトの点を除けば)大きな問題はない。しかし、成層圏プラットホームが飛行する亜音速域から、スクラムジェットが動作するマッハ5までの加速には別の機関が必要になってしまうのだ。このために別の機関を搭載するとなると、これまでのターボジェットなどでは燃料も異なる(スクラムジェットは燃焼速度が高いため水素を燃料とすることが有力視されている。これには液体ロケット機関と燃料を共通化できるメリットもある)し、さらなるデッドウェイトを抱え込むことになるので、スクラムジェットの採用によって生まれた重量面でのメリットが消し飛んでしまうのだ。

<書きかけ>

大気圏再突入時の最大の敵は“熱”だ。

現在の宇宙機では、落下による速度を空気抵抗で熱に変えて減少させている。スペースシャトルでは、地上の滑走路に着陸するため、滑走路の長さや着地時に受ける衝撃の大きさから、一定以下の速度に減速しなければならない。減速を空気抵抗のみに頼った場合、機体と空気の摩擦によって大きな熱が発生することになる。まあ、これは自動車のブレーキが摩擦によって運動エネルギーを熱エネルギーに変換して減速するのと同じだから、避けることはできないわけだ。

ということは、熱を減少させるには減速率を落としてやればいいわけだ。

減速率を落とすためには、大気圏再突入時と着陸時の速度の差を小さくすることが考えられる。
先に説明したように、地上の滑走路に着陸するための速度というのは滑走路の長さや機体強度などから上限が決まってしまうから、差を縮めるためには再突入速度の方を低下させるということになる。

ところが、大気圏再突入時の速度というのは厳密な計算によって決まっていて、それよりも速くても遅くても失敗してしまうのだ。この辺りの細かい内容はこんなブログでは説明しきれないので、気になる場合は自分でググってもらいたい。
ものすごく簡単に言うと、水面で石を跳ねさせる「水切り」という遊びを思い出してもらいたい。水面が大気圏で石が往還機だとすると、速度が速すぎると往還機は大気圏に弾かれてしまい、遅すぎるとすぐに沈んでしまうのだ。すぐに沈むなら問題ないと思われるだろうが、上に書いたようにすぐに沈むと減速率が高すぎて高熱を発し、地上に辿り着く前に燃え尽きてしまうのだ。

どっちも速度を変更するのが難しい、となればその途中でなんらかの方法で減速するしかないということになる。

スペースシャトルはマッハ20以上の高速で再突入し、地上近くではおよそ700km、着地時にはおよそ350kmに減速するようだ。ということは、成層圏プラットホームが亜音速で移動するとすれば、往還機を相対速度0で回収することが可能になるわけだ。ああ、やっと成層圏プラットホームの価値が出てきたぞ。

また、減速距離を長くすれば、それだけ減速率を低く抑えることが可能だ。スペースシャトルは、リフティングボディという揚力を発生する機体形状で作られているが、いかんせん帰還時は動力を持たないため、滑空というよりは制御された落下と言ったほうが正しい。打ち上げ時の問題もあって翼の大型化ができない以上、現状よりも減速率を低くすることはできないだろう。

しかし、十分な出力を持った動力があれば水平飛行が可能になるため、減速率(落下率と言い換えてもいいだろう)を大幅に減少させることが可能だ。

ふと思ったんだけど、スペースシャトルって冷戦時代の遺物でもあるんだよね。もしかしたら、ホントはもっと減速率を減らす降下方法とかがあったのに、共産圏の領空を飛行できないからああなったんだったりして。妄言だけど。



※書きかけ、これからどんどん長くなる。

2010年10月14日木曜日

ネタメモ004(ヘルベス)

成層圏プラットホームの話が途中ですが、リネ2のテオン掲示板に書き込んだレスが元スレごと消されてしまったので、ここに書いときます。なお、『傭兵哀歌』本編が次のページに流れているのでご注意ください。

元スレは「ベスペル アヴェンジャー(片手鈍器)にオプションでヘルスを付けるから、トライビューナルを撃つときのセリフを考えよ」というようなものでした。
で、ハヤカワさんがレスしたのが以下の台詞。

“治せ! ヘルベス! 医者に行け!!”


……元スレが消されたのはハヤカワさんのせいですかね?

いや、ハヤカワさん運営に何も言われてないからきっと大丈夫さっ!

ヒマなヒトはここのことを元スレの主に教えてあげるといいかも?

元スレ主はホラ、あの人間活火山のヒトですよ。


※この2、3日の体調不良はどうやらミネラル不足だった模様。おやつに黒糖かりんとう食ったら3時間で治った。←10月14日

※今朝、公式掲示板を見ようと思ったら、なぜかサイトに繋がらない。こりゃアレが原因で遮断でもされたかと焦るが、どうやら公式サイトが落ちていたようだ。今は繋がるので一安心。←10月15日

※ウム、昨日はブログ開設以来初めて閲覧者0を記録したぞ。もうダメだ。←10月15日

2010年10月8日金曜日

ネタメモ003(成層圏プラットホーム続き)

往還機用のプラットホームを成層圏に置く話の続き。

成層圏プラットホームはどんな機体になるんだろう?

今のところ成層圏を恒常的に飛行する物体というのはないんだが(米国の偵察機SR-71は高度25kmぐらいを飛ぶが、恒常的というほどの頻度ではない、と思う)、成層圏で電波の中継とか衛星がやるような仕事を肩代わりするための無人飛行船っていうのが考えられているので、これを叩き台にしてみよう。
これがまだ実現していないのは、成層圏は空気が薄いから十分な浮力を与えるためには機体が大型化してしまうこと(もちろん固定翼機の揚力も減る)と、空気が薄いといっても流れはあって、場合によっては50m/s(時速にすると180kmぐらい)の強風が吹くこと。大型化した機体は強風で流されやすい。そうなると、中継局としてはちょっと使い難いものになってしまうのだ。
風で煽られると機体がヘシ曲がっちゃったりするしね。まあこれは機体を柔構造にすればなんとかなるんだが、そうすると他の機器との兼ね合いが難しくなってしまうらしい。
というのも、飛行船で使用する機器を動かすには、当然のことながらエネルギーが必要だ。定期航路でもあれば別だが、ちょいちょい気軽に燃料を補給できる場所でもないことからすると、自給自足できる方が望ましい。核動力というのも考えられるが、放射線の遮蔽を十分にやるとすっげー重くなるし、事故が起きたときの影響を考えると無理だろう。
そうなると、もともと衛星の仕事の肩代わりなんだから、衛星と同じように太陽電池パネルを使用するのが手っ取り早い方法だ。数をそろえればプロペラ推進用のモーターも動かせるだろうから、風で流されることの対策にもなる。
しかし、太陽電池パネルを貼るにはしっかりした土台が必要だ。柔構造の軟式飛行船(でっかい風船だと思ってよろしい)ではそこが難しいようだ。1枚や2枚ならともかく、推進用のエネルギーとなるとそれなりの数が必要になるはずだ。

そういや、風の影響が大きいことを考えてたけども、静止状態に置くためには、常に推進している必要があるんだった。衛星軌道なら一度必要な速度を与えてやればそれで済むが、空気抵抗がある高度だと機体の大きさもあるし減速率はパねぇはずだ。さて、手元に資料がないんだけど、どのくらいの速度が必要になるだろう? 人工衛星だと周回軌道(静止軌道ではない)では7.9km/s(時速にすると28440km!)も出さなけりゃならない。静止軌道は少なくともこれより速いはずだ。遅けりゃ落っこっちまうんだからね。まあこれは重力に逆らう遠心力を速度で出す必要があるからこうなるんだけど、浮力体である飛行船だと純粋に地球の自転に同期する速度があればいいことになる。
ちなみに、赤道上での速度は時速にすると1700kmになるらしい。ああ、軽く音速を突破してしまった。もっとも、地球上にある物体は慣性によって自転と同期して動き続けようとするから、実際は空気抵抗や風によって減衰する分を補うだけで済むんだけど。まあどっち、めんどくさい計算だ。
それと、この速度は高度と緯度によって変化する点も見逃せない。ぶっちゃけ自転軸の上空なら“0”なのだ。とはいっても、高緯度だと往還機を打ち上げる時に自転の速度を利用することができなくなるから、できるだけ赤道上空が望ましいのは地上基地と同じ。
まあそんなこんなで、どうやら実用上必要な速度としては時速200km前後のようだ。これが巡航速度だから、位置の調整や何やで時速400km程度出せれば十分だろう。速いなら速いにこしたこたぁないのだが、過大な出力は過大な重量として跳ね返ってくるからあんまりおすすめできない。とりあえず、必要とされる速度の2倍ぐらいのマージンを取っておけば緊急時でもだいたい対応できるはず。これなら現状のテクノロジーでも可能だね。

ということは推進器はプロペラだ。想定した速度だとジェットよりもプロペラの方が効率がいい。動力源はレシプロ、電動モーター、ターボプロップなどが候補になるが、動力の自給を考えると電動モーターが最善だ。十分な出力が得られるかどうかは別として。このへんは技術の進歩が解決するだろうし。

暫定的に浮かべるポイントを太平洋の赤道付近、上空20kmにということに決めよう。

さて、これを往還機用のプラットホームにするとなると、往還機の収容機構だけでなく、整備機構、燃料(液体燃料ロケットの場合は液体酸素や液体水素を保存する極低温に耐えられるタンクが必要)やブースターが必要ならそれの収容場所、往還機に積載する貨物や乗客が待機する場所、それらを地上から運んでくる航空機の収容機構、管制や動力、ここで働く人々のための施設と、ざっと考えただけでもこれだけは必要になる。お土産売り場も忘れちゃいけない。宇宙まんじゅういかがっすかーっ! こりゃ軟式飛行船ではちと実現が難しそうだ。

じゃあこのアイデアはボツか? でも負けない。ここを無理矢理にでも科学力(ちから)で調伏するのが“えすえふ”というものだ。

基本構造に飛行船のような浮力体を利用するのは悪くないと思う。成層圏で固定翼機を静止状態に置くとなると、空気が薄いことによる揚力の低下を考えなくてはならないし、翼の揚力は速度が高いほうが大きくなる傾向があるから、低速な成層圏プラットホームでは、対流圏を飛ぶ飛行機よりも相当に長大な翼が必要になってしまう。そうなると重量や剛性の点で軟式飛行船よりも難しいかもしれない。

だから、揚力を補償するために浮力体を利用したほうがいいと思うわけだ。要するに、ネタメモ001のところでちょっと触れたハイブリッド型飛行船が使えるのではないだろうか。

つまり、成層圏プラットホームは基本的に対気速度が0になることはない(風がなけりゃ自力で動けばいい)のだから、翼はある程度の揚力を発生させることができる。足りない分をガスの浮力で補えばいいわけだ。これであればすべてをガスの浮力で賄うよりも機体を小型化でき、すべてを翼の揚力で賄う固定翼機よりも翼を小型化できるわけだ。
余談だが、飛行船のような大型の機体の場合、十分な速度があれば機首をわずかに上げるだけで機体そのものが相当大きな揚力を発生する。実際の飛行船でも、長距離飛行時には機首を3~5度程度上げることで揚力を稼ぎ、浮力ガスを節約するという手法が使われていたそうだ。気嚢の密封が悪い時代では、浮力ガスは時間の経過などで減少してしまうため、長距離飛行の場合は補充がかなり大変だったらしい。戦前にグラーフツェペリンが世界周遊の際に日本に立ち寄り、霞ヶ浦で浮力ガスや各種消耗品の補充をしたが、そのときの費用25万ドルの大半は浮力ガスと燃料の代金だったそうだ。

剛性の問題については、全体をブロック構造にして、それぞれに必要十分な浮力を与え、それを柔構造のジョイントで接合して風の影響を吸収するのはどうか? 要するに複数のハイブリッド型飛行船を繋いで1つの構造物とするわけだ。これを連環の計といいます。いかん、孔明の罠だ! まあ成層圏で火計はないから大丈夫だと思うよ? ミッソー! ミッソー! ミッソー! ←酔っ払いついでにR-360でアフターバーナーやったときは死ぬかと思った。

ということで、赤道上空20kmにハイブリッド型飛行船を複数連結した構造物を浮かべたぞ。

これでどうにか成層圏プラットホームの土台になる構造物を空中に浮かべたわけだが、これを航空機の発着場にする場合、技術的に大きな問題に直面せざるを得ない。

それは後流だ。

航空機に限らず、物体が空気の中を移動するとその後方には複雑な空気の渦が発生する。いわゆる乱気流というやつだ。固定されている物体に対して空気が動く、つまりは風、でも同じことで、高層ビルで問題になるビル風というのがそれに当たる。

この乱気流は飛行時には抵抗として働くだけでなく、その後方を飛行する物体に対して様々な悪影響を与えるものだ。

航空母艦を例に取ると、理着艦時の航空母艦は風上に向けて全速力で航行するが、このとき風を切る艦橋が強い乱気流を巻き起こす。さらに通常型空母だと煙突からの排気も加わわる。これらは複雑な乱気流を引き起こし、航空母艦後方に接近した艦載機の着艦姿勢を乱し、最悪の場合は着艦に失敗して大きな事故となる。現在の艦載機は自重が10トン以上あったりするので影響は少ないが、昔のプロペラ機ではこの乱気流に巻き込まれて操縦不能になり墜落という深刻な事故になるケースも少なくはなかったのだ。

で、後流は構造物が大きければそれだけ大きな渦となる。大型の航空機では、単に風を切ることによる乱気流だけでなく、翼端から翼端渦と呼ばれる巨大な渦を発生させる。これは大きな抵抗となって航続性に影響を与えるので、近年は長距離を飛ぶ大型機にはそれを軽減するウィングレットという小翼が取り付けられているものが多い。そして、翼端渦は大型機の後方に位置する航空機に対しては乱気流となって襲い掛かる。後方にいるのが同様に大型の機体であればそれほど影響はないが、これが軽飛行機などの小型機では操縦不能による墜落の危険があるのだ。

成層圏プラットホームもおそらくその巨大さ、現有の航空母艦より大きくなると思われるから相当な後流が発生することが予想される。成層圏の空気が薄いといっても、他の航空機に対してその影響は大きいだろう。空気が薄い分揚力も低下しているわけだし。

こうなると、大型の輸送機はともかく、無動力で滑空しかできないタイプの往還機では後流に巻き込まれたときの立て直しが難しいため収容は相当困難だろうと考えられる。十分な動力と姿勢制御が可能な翼がある往還機であれば、CCVなど電子的な姿勢制御技術が発達している現在なら収容可能だろう。収容方法にもよるが。

収容方法だが、まず考えられるのが空母と同じように航空甲板を用意する方法。これはすっげー面積が必要になる代わりに、整備やペイロードの積み替えが比較的楽にできる。カタパルト射出にすればかなりの大重量までイケル可能性は高い。電磁カタパルトなんかいいかもしれない。次世代の米海軍空母に採用される予定だし。

ただ、これの欠点は、着艦する航空機や往還機の重量まで成層圏プラットホームが背負わなけりゃならないってとこだな。予備浮力を十分用意できるか、できたとしても重量の変化によって高度が頻繁に変わるのはあまりよろしくない。高度調整で浮力ガスをあんまり放出しちゃうと補給が大変だしね。固定翼の揚力でも高度を調整できるが、これには速度の上下が必要だから、静止という点であまりよろしくないね。
あと、着艦する機体が後流に影響されやすいというのもある。一番懸念しなけりゃいけないポイントだ。

長大な飛行甲板をどうやって保持するかってのも難点だね。甲板がぐにゃぐにゃじゃあ着艦したくてもできなくなる。プラットホームに柔軟性を持たせられないと構造が破壊されやすいし。

他の収容方法としては、成層圏プラットホームからブームを出して、それに航空機や往還機を引っ掛けるという方法もある。戦闘機の空中給油をイメージすると分かりやすいだろう。後流から離れたところで引っ掛けて、固定したら近くまで引っ張り上げれば後流による不安定はほぼ解消できるだろう。重量の点でも、翼を持っている航空機であれば、その揚力を利用できるから、プラットホームの負担は大幅に減少するはずだ。飛行甲板は整備用など最小限でいいから、プラットホームの剛性の問題も出難いだろう。大気圏再突入直後で高温になっている往還機を直接載せなくてもいいのは便利かもしれない。

しかし、この方式はペイロードの積み替えや整備は難しいと思われる。旅客ぐらいならなんとかなるだろうが、大容積貨物を地上から来た航空機と往還機の間で積み替えるのは至難の業だ。万一落っことしたらエライ事故になる可能性がある。整備もやり難い。往還機は1往復ごとに整備が必要になるだろうが、それを成層圏プラットホーム上で十分にできないようであれば、毎回地上におろさなければならないので、成層圏プラットホームの意味がなくなってしまう。整備回数が減らせるようになれば大きな問題にはならないだろうが。この辺りはテクノロジーレベルの設定しだいか。

それと、結構問題になると思われるのが、往還機が成層圏プラットホームと速度をシンクロさせられるかどうかという点だ。前述のように成層圏プラットホームは時速200kmぐらいの速度しか出ない。一般的なプロペラ機の巡航速度としても遅い方だろう。プロペラ機時代末期の豪華旅客機ロッキードコンステレーションですら巡航速度が525km/hなのだ。
しかし、往還機はマッハの領域で飛行するものなので、これをプラットホームと同等の速度まで落とすと間違いなく失速する。根本的に翼や機体の構造が低速には馴染まない。これにプラットホームと同程度の速度で飛行できる翼をつけると、マッハ領域では確実に破壊されるし、仮に破壊されないとしても、宇宙では巨大なデッドウェイトになってしまう。

ということは、大きな速度差がある機体同士をすれ違いざまに接続するという技術が必要になるわけだ。フルトン回収システムの転用でなんとかなるかな。検討が必要だろう。とりあえず、収容を一発勝負にしないためには、往還機側に動力があって帰還時にも大気中を一定時間自由に飛行できるようにしておく必要がある。

これを解決するために、往還機を亜音速域で飛行する母機で射出回収する方法が考えられる。プラットホームへの収容は母機と一緒。これは技術的には悪くない、が、これなら地上から母機に載せて飛ばせばいいということにもなるので成層圏プラットホームの存在意義的に問題かもしれない。てかさ、元々は母機を常に成層圏に置いといたほうが都合よくね? から発展して成層圏プラットホームになっているわけだから、やっぱり親子式は棄てるべきだろう。

でも、飛行甲板だと空母と絵的に変わんないよねえ。甲板作業員が風圧で殉職しそうだ。

それじゃあ、成層圏プラットホームの速度を亜音速域まで上げられるようにして、通常は成層圏で静止、往還機の回収時は加速することにしようかね。一定範囲内を楕円(陸上競技のトラック的な)を描くように飛行してるのでもいいか。亜音速で。速度が上がれば揚力に余裕ができるできるから、重量物の積載もできるだろう。
問題は、現在のプロペラ機では亜音速飛行が難しいことだ。機体が700kmを超えた辺りでプロペラブレードの先端が音速を突破しちまうのだ。後退角付きプロペラを推進式に配置すれば、理論的にはプロペラ機での水平音速飛行も可能なんだけどね。効率はあんまりよくないみたいだが。かといって、ジェット機関は燃料補給の問題があるからあまりよろしくない。いっそ原子力ジェットか? まあ後退角付きプロペラが妥当なところか。

往還機の回収はフルトンシステムの改良型かな。速度が同期できるなら、プラットホームから空中給油機みたいなブームを延ばして掴むというのもアリか。

成層圏プラットホームの仕様はこんなとこだろうか。

次はこれ用の往還機について考えよう。


※ようこそ、リネ2の人々よ。テオン板で宣伝したおかげで見に来る人が飛躍的に増えましたね。でもね、コメントを書けとまでは言わないけど、リアクションぐらいしてってもバチは当らないと思うのよ? クリックするだけだし。

※リネ2関係で来る人向けに、傭兵哀歌の裏設定をちょっと書いておくよ。パルチザンのアジトはアデン王国のど真ん中で孤立しているんだけども、なんで傭兵に高給を払えるんでしょうね? 口約束だけで実際は払わないという考え方もあるんだけど、こういうことするとすぐに噂として広がるから新規の応募者がいなくなってしまう可能性が高い。酔っ払いを騙してサインさせるとかじゃないと。
じゃあ、実際に払っているとして、どこからアデナが供給されてるんだろうか? キャッツアイが近隣から略奪をしているという話は出てくるけど、これで賄い切れるとはハヤカワさんは思っていない。
さてそれじゃホントにどこから?
ハヤカワさんの想像ではドワーフ族の「天秤のギルド」が資金提供をしていると思うのだよ。天秤のギルドは、アデン王国と商売をしながら、裏でグレシアと通じていて、戦争でどちらが勝ったとしても利権を握れるように、さらには戦争を長期化させることによって商売を増やそうとしているわけだ。でも、アデナはともかくグレシアから兵士を輸送することまでは難しい。
だから、パルチザンのアジトでは資金はあっても人員は足りないという状況になっているんだね。
ちなみに、パルチザンのアジトに出入りしているドワーフの商人は個人でやっている振りをして、実は天秤のギルドの上層部から指令を受けて派遣されているのだ。アレだね、エリア88のマッコイ爺さんみたいなもんだね。いや、どっちかってえとプロジェクト4か。だから雑貨だけじゃなく武器や防具も扱っているぞ。
最初はこの辺りのことも盛り込もうと考えていたのだが、長くなりすぎるのと本筋から離れてしまうことからカットした。その名残が若いオークが紙とペンを買いに行く場面なんだね。まあ、まるっぽ切ってもよかったんだけど、そのうちまた別の物語を書くときの伏線として残しておいたんだよ。

※昨日から体調がおかしいと思ったら、ちょっと風邪ひいたッぽい。更新が滞る可能性あり。←10/12

※先週から父親が入院中。

2010年10月5日火曜日

ネタメモ002(成層圏プラットホーム)

ナイトさんのお誕生日が近いので「ちょこっとコース」で課金してみたハヤカワさん。しかし、近所のローソンでネットキャッシュを買おうとしたら、最低金額が2000円でやんの。昔は1000円からあったような気がするんだけどなあ。おかげでサイフが空っぽになっちまったよ。

はいっ、ここまで愚痴。



さて、そろそろ商業宇宙旅行が視野に入ってきた今日この頃なので、宇宙に行く方法について考えてみよう。

米国のスペースシャトルが退役目前ということもあり、これからしばらく宇宙に行くには旧来の使い捨てロケットに頼らざるを得ない。商用衛星を打ち上げられる規模ならアリアンやH-IIとかもあるけれど、有人となると現状ではロシアが運用しているソユーズ一択になってしまう。厨華なんだか有人宇宙機を打ち上げたけど、安定した打ち上げができるほどではないようだ。技術的にもソユーズの劣化版でしかないみたいだし。まあ、将来を見込んで海南島に打ち上げ基地を作ってるみたいだが。

だがしかし、ハヤカワさんの考えるところによると、地上からの打ち上げ方式では、コスト的に安定した商用宇宙旅行は難しいと思うのだ。ロケットなんていうものは燃料がほとんどの重量を占めていて、あとはモーターとガワだけだとはいっても、打ち上げが増えれば使い棄てられる資源も無視できないものになるし、やぱり将来的には往還機が必要になるだろう。

軌道エレベーターっていう手も考えられているが、これはちょっと技術的に未来過ぎる。これができとしても、あと何十年かかかるだろうし、その間を繋ぐ技術として往還機が欲しい。宇宙旅行のロマン的にも。

しかし、最初の往還機であるスペースシャトルは残念ながらコスト的には大失敗だといわざるを得ないものだった。

機体の製造コストが高騰したのもあるが、運用コストの増大はそれ以上だったようだ。試作の段階で耐熱タイルがボロボロ剥がれたり、運用が始まってからは帰還のたびに耐熱タイルを張り替えなけりゃならなかったりな。本来往還機はコスト削減のために企画されたはずなのが、蓋を開けたら使い捨てよりコストが高くなっちゃったのだ。
それでも、大容積の貨物を搭載したまま打ち上げたり、衛星を回収して地上に持ち帰るなどという仕事は、他国の往還機が計画段階から進んでいないこともあって需要があり、今までだましだまし使われ続けてきたわけだ。

宇宙開発が進んでくれば、こうした需要は増大すると考えられる。まあ衛星の修理なんかは宇宙空間でできるようになればそこでやることになるんだろうが、そうした仕事に必要な施設を構築するためにも、当分の間は地球からモノを運んだり、宇宙から降ろしたりなくてはならない。

んで、往還機が難しいのは、宇宙へ行く機能と大気圏を飛ぶ機能の両方を同時に持っていなけりゃならないところだ。

大気圏を効率よく飛ぶためには、大気中を利用できるエンジンと翼があったほうがいいが、これは宇宙に行くとまったく機能しない無用の長物だから、宇宙に無駄な重量を運ばなければならないことになる。

宇宙を飛ぶためだけの装備だと、揚力を発生させて機体を支える翼がないから、大気圏を飛ぶには常に音速以上である必要があるし、大気中の酸素を酸化剤に利用しないエンジンは酸化剤を同時に持っていかないと動かないから、これも無駄な重量を抱え込むことになるわけだ。

両方で動作するエンジンがあればいいんだが、今のところそこまで都合のいいエンジンは存在しない。

次に問題になるのが大気圏再突入時に発生する熱。
そらもうハヤブサが燃え尽きたり、スペースシャトルが燃え尽きちゃったりするぐらいすごい熱が発生するんだから大変だ。

ただ、この熱なんだが、大気の圧縮熱と摩擦熱が大部分を占めるということだから、降下速度を遅くすることができれば下げることができるんじゃないだろうか? で、これを実際にやってみたのが民間で初めての有人宇宙機に認定されたスペースシップワンだ。宇宙空間といっても、厳密に言うと準軌道高度への弾道飛行なんだそうだが、この機体は大型の翼というかエアブレーキを備えていて、降下時はこれを利用して速度を遅くすることでスペースシャトルほど耐熱構造を強化せずに済んでいるわけだ。

で、スペースシップワンのもう一つの特徴は、ある程度の高度までは母機に吊り下げられて移動し、そこからロケットモーターを噴かして宇宙まで飛ぶのだ。これは、宇宙までの距離を少なくできるし、速度0からの加速もしなくていいから燃料の節約になり機体を小型化できる。つまり、宇宙に運ぶ重量を減らせるからエンジンも小型でいいということになる。

もっとも、この考え方自体は古くからあるもので、スペースシップワンのオリジナルではない。過去には米国のX-15なんかがB-52を改造した母機から発進して宇宙に行っている。最大到達高度は108kmぐらいだから間違いなく宇宙空間だ。

それと、発射時の騒音や安全性という点でも空中発射は有利だ。宇宙ロケットの打ち上げは地球の自転で発生する遠心力を利用するため、赤道近くが望ましい。さらに、打ち上げに失敗したとき地上に被害が及ばないように、打ち上げ基地の東側が海上や無人の荒野であることも重要だ。宇宙に出るまでに他国の領空に入ってしまうと、領空侵犯にもなりかねない。北は気にせずやるが、まあこれは多分に嫌がらせの意味もあるから向こうにとっては失敗してもそれなりに意味があるのかもしれない。

このため、米国はフロリダ半島東側のケープカナベラル、EUはフランスの海外県である南米ギアナ、日本は種子島と内之浦を基地として利用してきたわけだ。ロシア(当時ソ連)は低緯度地域に海に面したような場所がないため、内陸のバイコヌール基地を作った。こう考えると、フィリピンなんか打ち上げ基地を誘致するといいのかもね。まあ、アメリカ以外のを作ろうとすれば横槍が入るだろうけど。

空中発射の場合はこうした制約はあまりない。太平洋や大西洋、インド洋といったなんの障害もない場所まで母機にぶら下げていけばいいんだから。


で、次は帰還の話。

スペースシップワンもX-15も帰還は滑空して地上に着地するようになっている。

これは、地上基地のほうが整備やなにやらで有利だということもあるが、両者が帰還時には動力を持たない滑空機であることも影響しているだろう。現状の技術では高速で降下してくる滑空機、しかも一般的なグライダーのような機動性は持たない、を空中収容するなんてことは不可能に近いのだ。

空中収容の場合、母機と往還機が両方とも動いているから、会合点を厳密に計算しないといけないことになる。しかも、往還機が滑空機だとほぼ落ちていくだけだから、多少速度を変えたり左右に動くことはできる、ほぼ一発勝負になってしまう。往還機がいわゆるグライダーみたいに巨大な翼を持っていれば別だが、地球から飛び出したり、大気圏に再突入するときの速度から考えると現実的ではない。

しかし、地上基地への帰還の場合、地上の天候などの条件によっては帰還ができない場合がある。スペースシャトルみたいに地球上のあちこちに基地を用意したり、それらが利用できない場合は地球周回軌道上で待機することもある。乗員用酸素や食料残量、バッテリーといったとの勝負だから、これは最後の手段だといえるだろう。

で、ハヤカワさんがこういうことを考えていったところ、成層圏辺りにでっかいプラットホームを浮かべて、そこで打ち上げや回収をやるってのはどうよ? っていうことになったわけだ。キャプテンスカーレットのクラウドベースみたいなのをね。

やっと結論というか、思考の開始点までやってきた。

次は、これを実現するために必要な技術なんかを考えてみよう。


※さっき100HIT超えた。約1か月かかったねえ。早いのか遅いのかようわかりませんが、来てくれた人はありがとう。←10月6日深夜

※10月7日はスミスさんのお誕生日。忘れずにお誕生日プレゼントをもらいにいかないと。←もろた

※ハヤカワさんがお話を作るときは、こうやって最初に物語の舞台になる場所について有り得ることや有り得ないことを徹底的に考えていく。すると、そこでいったいどんなことが起こるのかということがわかる。お話をご都合主義にしないためには、ここをどれだけ細かく作れるかがカギになる。
舞台ができてしまえば、そこにキャラクターを配置して、あとはハヤカワさんがキャラクターが行動を起こすための状況を組み込んでやることで、お話は自動的に動き出してくれるのだ。
例えば、成層圏のプラットホームで爆発事故が起きたとしよう。すると、外は大気圏内とはいっても人間が生身で出て行くことはできないような場所だから、内部でどうやって解決していくかということになる。もし外に出るならそれなりの装備を用意しなくてはならない。それをどうやって手に入れるか? とかね。少なくともパラシュートを背負って飛び降りるなんてことはできるわけがないので、そういうことはやっちゃいけないというお約束ができる。
お約束があれば、それを破る方法を考えることもできる。
人間は宇宙空間に生身で放り出されるとすぐに死んでしまう。一般的な常識ではこうなんだが、実は訓練された宇宙飛行士なんかだと、生身のままでも1~2分間は行動できるらしい。呼吸が可能ならもう少し延ばすこともできるようだ。
となると、爆発事故で外に放り出されても、そのぐらいの時間でたどり着ける距離に安全地帯があれば、生還することも可能だということになる。安全地帯がギリギリの距離であればあるほどエピソードとしては面白くなる。
ハヤカワさんがグダグダと長文を書いているのは、こうした理由からであって、何の意味もないことではなかったりするんだ、ということ。書かないと考えが整理し難いからね。まあ言い訳ですわね。

※10/11 なんだか体調悪ぅー。追記するようなことが頭でまとまらない。

2010年10月4日月曜日

傭兵哀歌Sequel

※先日掲載した「レイド部下ストーリーズ~傭兵哀歌~」の後日譚。例によって「リネージュ2」プレイヤー以外には分かりにくいのでお覚悟を。



 数日前に冒険者たちの襲撃を受け、ボスを中心に甚大な被害を蒙ったパルチザンのアジトであったが、負傷していた兵の復帰も重傷者を除いて始まったこともあり、復旧のための作業が本格化していた。
 作業は襲撃の翌日から昼夜を問わず続けられていたが、この日は気候の安定したアデン地方にしては珍しく、朝方から降り始めた雨はなかなか止む気配を見せなかった。夕刻になっても雨足は一向に弱まらず、足場が悪い中での夜間の作業は危険であるため止む無く中断が決定され、兵たちは少数の歩哨だけ残してそれぞれの宿舎に戻り、連日の作業で疲れた体を休めることとなった。

 雨は夜半近くになってわずかに弱まったものの、翌朝までは続くであろうと思われた。山中のアジトは時たま巡回してくる歩哨以外は動くものもなく、久しぶりに静かな夜を迎え、日付が変わろうとする頃にはほとんどの兵士が寝静まっていた。

 しかし、雨音に遮られて多くの者が気付いていなかったが、錬兵場には昼間と同じように大勢の訓練兵たちが集合しようとしていた。

 整列した訓練兵の前では教官が、周囲を意識して低く抑えてはいるものの、普段の訓練と同じように鋭い声で矢継ぎ早に命令を下していく。
「小隊傾注! これより夜間行軍の訓練を行う! 1分以内に準備を終わらせろ!」
「毛皮を濡らすな! 濡れた毛皮は体力を消耗させるぞ! 今のうちに十分に油を含ませておけ!」
「いいか、訓練と言えどアジト外での行動である以上敵と遭遇する可能性が皆無なわけではない、決して油断はするな!」
「雨は自分の気配を消してくれるが、敵の気配もまた掴みにくくなる。不意の遭遇戦では何が起こるか分からん。死にたくなければ一時たりとも気を抜くな!」
 そして、最後に教官は防水シートに包まれた大きな荷物を指さした。補給品であろうか、これだけの量が準備されているとなると相当長距離の行軍であることが予想される。
「お前たちも分かっているとは思うが、この荷物は重要なものだ、極力揺らさぬよう努めよ! 乱暴に扱う者は懲罰の対象になるぞ! なお、担ぎ手は半刻毎に交代! 疲労で行軍速度を落とさぬよう注意せよ! 明日の朝には戻らねばならん!」
 コートを着込み、雨避けの油を全身に塗り終わった訓練兵たちは再び整列し、負担を均等にするため体格の近い者から選び出された担ぎ手たちが、輿に乗せられた荷物に不要な衝撃を与えないよう慎重に担ぎ上げる。
「よし、準備はできたな? では小隊進め!」

 教官の先導で訓練兵たちが出発しようとしたその時、錬兵場脇の草叢を掻き分けて数名の屈強な兵が現れ、その後に続いてオル マフム ロードが悠然と歩みだしてきた。
「か、閣下、夜分にこのような場所にいらっしゃるとは、何か急な事態でも? まさかまた冒険者どもが?!」
 突然のことに教官だけでなく訓練兵たちも瞬時に硬直し、ロードを注視する。
「いやそうではない、少々目が冴えて眠れぬがゆえ、復旧状況を見回っておったところにこの騒ぎを聞きつけたものである。今宵は訓練があるとは聞いておらぬが、なぜ訓練兵を集結させているのか?」
 どうやら予定にない訓練を行おうとしたところに不審を抱かれてしまったようだ。しかし、訓練の内容を決定する権限が教官にある以上、ジェネラルといえども口を挟む筋のことではない。自信を持って正当な答えを返せばよいだけである。
「はい、それであれば今晩は雨天でもあり、夜間行軍の訓練に適していると考え、自分の独断で召集したものです!」
「左様か、ご苦労である」
「いえ、先の襲撃により、兵力の大幅な減少を余儀なくされておりますがゆえ、少々過酷にはなりますが、訓練兵どもを一刻も早く戦力化するべく務めるのは、自分の職務において当然であると考えます」
「よろしい。貴様の教官としての仕事には満足しておる。良いようにせよ」
「ありがとうございますっ!」

 教官の答えに満足して頷き、このまま踵を返すと思われたロードだったが、なぜか担ぎ上げられた荷物に目を留め、振り向きざまに質問を投げかけてきた。
「時にその大きな荷物はなんであるか?」
 不意打ちであった。先の答えでロードを納得させることができたと安堵していただけに、教官は一瞬返答に窮してしまった。
「こ、これは、……そうです、物資の輸送訓練を兼ねるため準備したものであります!」
 このわずかな戸惑いに不審を抱いたのか、それとも最初から不審に思っていたのか、ロードは荷物に近付くと鼻を鳴らして丹念に匂いを確認する。
「ふん、隠さんでもよい。儂の鼻はそこまで衰えてはおらんぞ? 荷物の中身はあのオークなのであろう? 貴様は訓練を装い、司令部に上申することなく彼の村にこれを送り届けるつもりであるな?!」
 この言葉に教官の背筋は一瞬にして凍りつく。ロードの指摘通り、荷物の中には補給物資の間に隠すように、先の戦いで倒れた若いオークの体が納められていたのだ。
 教官は、若いオークの身に起きたことを自分の責任と受け止め、せめて自らの手で彼を母親の元に返そうと、若いオークと同期の訓練兵の中から有志を募り、この雨を利用して密かにエンク オークの村への強行軍に出ようとしていたのだ。
「申し訳ありません、戻り次第いかなる罰でもお受けいたしますので、この場はどうか御容赦下さい!」
 教官は腰を大きく折り、地面に着かんばかりに頭を下げてロードに懇願する。無断で根拠地を離れることは、場合によって脱走とも見做されかねない。最悪の場合は軍法会議にかけられることを覚悟しなければならない重大な軍紀違反なのだ。

 ロードは頭を下げたままの教官をじっと見つめている。
 それはほんの1分にも満たない時間であったが、その場に居る者にとっては無限にも感じられた。


「閣下っ!」
 凍りついた空気を破るように、整列した訓練兵の中から1人が前に出た。
「オレたちからもお願げえします。こかあどうで見逃して下せえ!」
 彼が頭を下げると、それを合図にしたように他の訓練兵たちも次々に前に出て、ロードに向かって頭を下げ始める。
「オレからもお願げえしやす!」
「お願いしやす、オレたちゃヤツをあのまんま放っておくなんざ、できやしねえんです」
「オレもです!」
「おいらもお願えしやす!」
 その中には、若いオークと訓練を共にした魔法職の者だけでなく、同期とはいえ彼とは直接関係のなかった物理アタッカー職までもがいる。
 最後には、荷物を担いだ者以外は全員がロードの慈悲を求めて頭を下げていた。
 彼らがこの行軍に志願したのは戦友への思いも確かににあっただろう。
 だが、それだけではない。いずれ前線にでて戦う彼らにとって、自分が倒れた時に正当な扱いを受けるために、先に倒れた者を不当に扱うことは絶対にあってはならないという必死の念があったのだ。

 頭を巡らし、表情も変えずに訓練兵たちを一瞥したロードであったが、教官の方に向き直すと突然表情を崩し、ニヤリと笑う。
「バカモノどもめ、貴様ら何を勘違いしておる? 我が軍のために身命を賭して戦った兵士に報いるのは当然のことである。それを誰が罰することができようか。只今この場で発令するがゆえ、正規の任務としてしっかりと送り届けるように。よいな? なお、アジトを離れるのに訓練兵だけでは心もとなかろう、貴様に儂の護衛兵を預けるので存分に使うがよい。正規兵と行動を共にすることは、訓練兵にもよい勉強になろう」
 ロードの言葉があまりに意外であったため、教官はそれを聞くとしばし放心したような表情になり、そして状況を理解すると先ほどよりもさらに深く頭を下げた。
「閣下……ありがとうございます!」
「礼などいらん。本来なら儂が率先して命じなければならないことである。だが、言い訳にはならんが、復旧に手をとられて後手になってしまっておった。彼と母親には詫びねばならん」
「閣下、僭越ではありますが、自分が名代として閣下のお心を彼の母親に伝えることをお許しください」
「よろしい、貴様に儂の名代として以後の処理を一任する。では儂は司令部へ戻るぞ。以上!」
「はいっ! ありがとうございますっ!」
 その場の全員が最敬礼で見送る中、ロードは振り返ることなく、現れたのと同じように草叢の中を悠然と歩いて行った。


 雨の中、荷を担ぎ隊列を組んだ訓練兵たちは粛々と進む。
「担ぎ手は歩調を乱せ! その方が揺れが少なくなるぞ!」
 教官はすべてに気を配り、細かな指示を飛ばす。
「斥候は先行して地形を偵察せよ! 残りの者は荷物を中心に縦列を組み前進!」
 濡れた斜面の下生えは滑りやすい。訓練兵は暗闇でも目が効くオル マフムが多いが、それでも慎重に進まねばたちまち足を滑らせてしまうだろう。殊に今は間違っても落下さるようなことがあってはならない荷物を運んでいるのだ。前を行く斥候が安全そうな道を探しては邪魔な枝葉や潅木を山刀で切り払い、荷物が通れるだけの広さを確保し、少しずつ荷物を前進させる。
 馴れない作業ではあったが、教官と訓練兵たちはなんとかアジトとクルマ湿地の境界近くまで進み、ようやく森が途切れ見通しのよい平原に到達しようとしていた。
 しかし、そろそろ全員に疲労が溜まりつつある。この先は平原であるだけに移動は楽になるが、見通しがよければ敵からもこちらを発見しやすくなるということでもあるため、より迅速な移動が求められる。
 疲労によるもたつきは命取りになりかねないと判断した教官は、森を出る直前で小休止して疲労を回復させ、その後に平原を一気に突っ切ることにした。
 行軍を停止させ、全員に警戒を厳しくするように命じたのと同時に、前方の木の陰から肥満した大きな影がのそりと現れ、教官たちの前に立ちはだかった。
「誰だっ! なぜそこにいる? 返答の次第によっては命はないぞ! くそっ斥候はなぜ見逃したのかっ!」
 教官が影に向かって厳しい声で誰何し、同時に手練の護衛兵が訓練兵を抑えて先頭に出る。

「よう、教官殿。夜中だってのに生徒どもを引き連れて遠足かい?」
 この陽気な声の持ち主は、影の正体は、若いオークの上官であったキャッツアイであった。
「これはキャッツアイ様! もうお怪我はよろしいのですか?」
 冒険者の襲撃によって深手を負わされ、財宝をほとんど奪われてしまったキャッツアイであったが、持ち前の身のこなしで致命傷だけは避け、ヒーラーたちの夜を徹した手当てにより、この2、3日でなんとか生命の危機を脱するまでに回復していた。
「おう、まだあっちこっち痛むけどよ、まあ1人で出歩ける程度にゃあなったぜ」
 当人は気楽そうに応えるが、あの惨状を知るものからすれば、とうてい信じられるものではない。相当な無理をしているのだろう。これは何かあると教官は直感した。
「それは何よりでした。して、そのようなお体で散歩とも思えませんが?」
「お前ら遠出すんだろ? ちょいとついでを頼みてえんだがいいかい?」
「ついでですか? 我々はこれより夜間行軍の訓練ですので、キャッツアイ様といえど御用を承ることはことは難しくありますが?」
 キャッツアイが軍隊的な規則を嫌うとはいっても、非番でもない者に私用をいいつけるようなことはない。しかも、わざわざ傷だらけの体をおしてのことだ。
「なに、手間を取らせるようなもんじゃねえ。ただちょいとコイツを一緒に持ってってもらいてえだけだ」
 キャッツアイは使い込まれた皮袋を身構える教官に投げる。それはがしゃりと重い金属音を立てて教官の手の中に納まった。
「これは……もしやアデナですな?」
 皮袋には魔法がかけてあり実際よりもかなり重量が軽くなっているはずだが、それでもずしりと重い手ごたえが感じられるところからすると、相当な額が入っているだろう事は想像に難くない。
「ああ、こないだ冒険者どもに散々毟られちまった後だから大したこたあできねえけどよ、向こうのお袋さんによ、当面の暮らしの足しにしてくれってな。……まあ、こんなことで詫びになるとも思わねえけどよ」
「キャッツアイ様も我々の目的をご存知でしたか……お気遣いありがとうございます。彼に代わってお礼を申し上げます」
「何にしても……野郎、生真面目なのが災いしちまったな」
「はい、よい若者でしたが……すべては自分の教育が至らなかったせいです」
「いや、おめぇはよくやってくれたよ。野郎の仕事はいってえ悪りいもんじゃあなかったぜ。……ただ、ほんのちいっと早すぎたんだよ。もうちっとだけ実戦の勘所を教えてやれればよ、こんなことにゃあならなかったかも知れねえと思うとよ」
「……あと少し自分の手元において生き残る術を叩き込んでおいたら……そう思うと悔やんでも悔やみきれません」
「なあ、そう手前ぇを責めるもんじゃねえよ。オレだって野郎を先に逃がしてやれなかったんだしよ……手前ぇのことに手一杯で手下ぁ見殺しにしちまうなんざ……へっ、親分親分って持ち上げられていい気になってたのがよ、ざまあねえや」
 キャッツアイは雨が顔に落ちるのも構わず空を見上げる。しとどに濡れたキャッツアイの顔には、雨ではないものが混じっているのかもしれない。
「キャッツアイ様……」
 教官が何かを言おうとしたが、キャッツアイはそれを遮る。
「いや、もうよしにとこう。今さら何を言ってもあの野郎がここに帰ってくるこたあねえんだ。さあ、お前たちゃもう行きな。あんまり立ち話してっと向こうに着くまでに夜が明けっちまうぜ」
「はい、では失礼します。小休止終了! 行軍を再開する!」
 訓練兵たちは再び整列し、荷物を担ぎ上げる。
「おう、ひよっこども、冒険者に気ぃつけろよ!」
「キャッツアイ様も御自愛を。小隊出発!」
 しとしとと降り続く雨の中、大きな荷物を担いだオル マフムの群れは、音もなく闇の中へと消えていく。


 それから1つ2つ季節を経てのこと。
 ディオン丘陵地帯の近くでは、片手と片目のないオークと、杖を突き足を引き摺ったオークが、お互いを気遣うかのように寄り添い、ゆっくりと歩いていく姿を見かけたという噂が人々の口の端に上ったという。
 だが、それがあの若いオークと年老いたオークであったのかを知る術は、今はもう、残されてはいない。

2010年10月1日金曜日

今日の雑感008

1)
報道の自由には、

報道“する”自由だけでなく、

報道“しない”自由が含まれていることを忘れてはならない。

実のところ、それがマスメディアの最大の武器である。

彼らは自己の都合で報道内容を自由に選択する。

一般市民は、マスメディアが知るべきであると考えるものしか知らされない。

彼らが知るべきではないと考えるものは、それがいかに重要なことであろうと一切知らされることはないのだ。人々の意識において、知らないことは存在しないのと同じだ。

ネットの普及によってこの問題は解消されたように見えるが、ネットは能動的に知ろうとする者には情報を与えてくれる(それが正しいか正しくないかは別の議論だ)が、受動的である者には何も与えてくれないということを見過ごしてはならない。

そして、多くの一般人は受動的であるのだ。



2)
どのような戦争であれ、すべては利益を基準にして行われる。

勝利が利益を生むならば戦争は開始されるし、そうでなければ開始されない。

ただし、その利益は経済に直結するものだけではないことに注意が必要だ。

反戦運動は、それを不利益と考える為政者には有効だが、それでも反戦運動の不利益よりも大きな利益をもたらす可能性が十分にあれば、武力の行使は躊躇されない。

そもそも反戦運動を不利益とは考えない為政者に対してはまったく効果はない。

戦争を起こさないためには、戦争が利益を生まない構造を国際的に構築するしかない。


3)
戦略的互恵関係とは、相互の依存度が均等である場合にのみ有効な考え方だ。

依存度の格差が大きければ、それが少ない方(もしくは少ないと考える方)によって簡単に破棄または利用される危険があるのだ。

政府は対独戦が終結した瞬間に日ソ中立条約がいとも簡単に反故にされたことを憶えていないのだろうか。

資源小国が優位に立つためには人材と技術を育てることが重要だ。

技術移転を行うのはよいが、中核技術だけは流出させてはならないし、人を安易に切り捨てる企業は潰してしまってもかまわない。


※9月分を読み返して思うが、それにしても楽しいハナシが全然ないブログであることよ。それだけ世間に楽しいことがないということなのかもしれないし、そうではないのかもしれない。

※そういやアレだ、ブログのタイトルなんですがね、「人魚亭異聞~無法街の素浪人」っていう三船敏郎が主演した時代劇が元になってるんですよ。だから、最初「ハヤカワ亭異聞~ウホッGUYのスロー人」にしようとしたんですが、試しにそれでググってみたらアッチ方面の人が大量に来ちゃいそうな勢いだったので踏みとどまりました。

※現在、「傭兵哀歌」の後日譚を執筆中。本編を流さないために新しい記事を増やせないのが悩ましい。←終了