往還機用のプラットホームを成層圏に置く話の続き。
成層圏プラットホームはどんな機体になるんだろう?
今のところ成層圏を恒常的に飛行する物体というのはないんだが(米国の偵察機SR-71は高度25kmぐらいを飛ぶが、恒常的というほどの頻度ではない、と思う)、成層圏で電波の中継とか衛星がやるような仕事を肩代わりするための無人飛行船っていうのが考えられているので、これを叩き台にしてみよう。
これがまだ実現していないのは、成層圏は空気が薄いから十分な浮力を与えるためには機体が大型化してしまうこと(もちろん固定翼機の揚力も減る)と、空気が薄いといっても流れはあって、場合によっては50m/s(時速にすると180kmぐらい)の強風が吹くこと。大型化した機体は強風で流されやすい。そうなると、中継局としてはちょっと使い難いものになってしまうのだ。
風で煽られると機体がヘシ曲がっちゃったりするしね。まあこれは機体を柔構造にすればなんとかなるんだが、そうすると他の機器との兼ね合いが難しくなってしまうらしい。
というのも、飛行船で使用する機器を動かすには、当然のことながらエネルギーが必要だ。定期航路でもあれば別だが、ちょいちょい気軽に燃料を補給できる場所でもないことからすると、自給自足できる方が望ましい。核動力というのも考えられるが、放射線の遮蔽を十分にやるとすっげー重くなるし、事故が起きたときの影響を考えると無理だろう。
そうなると、もともと衛星の仕事の肩代わりなんだから、衛星と同じように太陽電池パネルを使用するのが手っ取り早い方法だ。数をそろえればプロペラ推進用のモーターも動かせるだろうから、風で流されることの対策にもなる。
しかし、太陽電池パネルを貼るにはしっかりした土台が必要だ。柔構造の軟式飛行船(でっかい風船だと思ってよろしい)ではそこが難しいようだ。1枚や2枚ならともかく、推進用のエネルギーとなるとそれなりの数が必要になるはずだ。
そういや、風の影響が大きいことを考えてたけども、静止状態に置くためには、常に推進している必要があるんだった。衛星軌道なら一度必要な速度を与えてやればそれで済むが、空気抵抗がある高度だと機体の大きさもあるし減速率はパねぇはずだ。さて、手元に資料がないんだけど、どのくらいの速度が必要になるだろう? 人工衛星だと周回軌道(静止軌道ではない)では7.9km/s(時速にすると28440km!)も出さなけりゃならない。静止軌道は少なくともこれより速いはずだ。遅けりゃ落っこっちまうんだからね。まあこれは重力に逆らう遠心力を速度で出す必要があるからこうなるんだけど、浮力体である飛行船だと純粋に地球の自転に同期する速度があればいいことになる。
ちなみに、赤道上での速度は時速にすると1700kmになるらしい。ああ、軽く音速を突破してしまった。もっとも、地球上にある物体は慣性によって自転と同期して動き続けようとするから、実際は空気抵抗や風によって減衰する分を補うだけで済むんだけど。まあどっち、めんどくさい計算だ。
それと、この速度は高度と緯度によって変化する点も見逃せない。ぶっちゃけ自転軸の上空なら“0”なのだ。とはいっても、高緯度だと往還機を打ち上げる時に自転の速度を利用することができなくなるから、できるだけ赤道上空が望ましいのは地上基地と同じ。
まあそんなこんなで、どうやら実用上必要な速度としては時速200km前後のようだ。これが巡航速度だから、位置の調整や何やで時速400km程度出せれば十分だろう。速いなら速いにこしたこたぁないのだが、過大な出力は過大な重量として跳ね返ってくるからあんまりおすすめできない。とりあえず、必要とされる速度の2倍ぐらいのマージンを取っておけば緊急時でもだいたい対応できるはず。これなら現状のテクノロジーでも可能だね。
ということは推進器はプロペラだ。想定した速度だとジェットよりもプロペラの方が効率がいい。動力源はレシプロ、電動モーター、ターボプロップなどが候補になるが、動力の自給を考えると電動モーターが最善だ。十分な出力が得られるかどうかは別として。このへんは技術の進歩が解決するだろうし。
暫定的に浮かべるポイントを太平洋の赤道付近、上空20kmにということに決めよう。
さて、これを往還機用のプラットホームにするとなると、往還機の収容機構だけでなく、整備機構、燃料(液体燃料ロケットの場合は液体酸素や液体水素を保存する極低温に耐えられるタンクが必要)やブースターが必要ならそれの収容場所、往還機に積載する貨物や乗客が待機する場所、それらを地上から運んでくる航空機の収容機構、管制や動力、ここで働く人々のための施設と、ざっと考えただけでもこれだけは必要になる。お土産売り場も忘れちゃいけない。宇宙まんじゅういかがっすかーっ! こりゃ軟式飛行船ではちと実現が難しそうだ。
じゃあこのアイデアはボツか? でも負けない。ここを無理矢理にでも科学力(ちから)で調伏するのが“えすえふ”というものだ。
基本構造に飛行船のような浮力体を利用するのは悪くないと思う。成層圏で固定翼機を静止状態に置くとなると、空気が薄いことによる揚力の低下を考えなくてはならないし、翼の揚力は速度が高いほうが大きくなる傾向があるから、低速な成層圏プラットホームでは、対流圏を飛ぶ飛行機よりも相当に長大な翼が必要になってしまう。そうなると重量や剛性の点で軟式飛行船よりも難しいかもしれない。
だから、揚力を補償するために浮力体を利用したほうがいいと思うわけだ。要するに、ネタメモ001のところでちょっと触れたハイブリッド型飛行船が使えるのではないだろうか。
つまり、成層圏プラットホームは基本的に対気速度が0になることはない(風がなけりゃ自力で動けばいい)のだから、翼はある程度の揚力を発生させることができる。足りない分をガスの浮力で補えばいいわけだ。これであればすべてをガスの浮力で賄うよりも機体を小型化でき、すべてを翼の揚力で賄う固定翼機よりも翼を小型化できるわけだ。
余談だが、飛行船のような大型の機体の場合、十分な速度があれば機首をわずかに上げるだけで機体そのものが相当大きな揚力を発生する。実際の飛行船でも、長距離飛行時には機首を3~5度程度上げることで揚力を稼ぎ、浮力ガスを節約するという手法が使われていたそうだ。気嚢の密封が悪い時代では、浮力ガスは時間の経過などで減少してしまうため、長距離飛行の場合は補充がかなり大変だったらしい。戦前にグラーフツェペリンが世界周遊の際に日本に立ち寄り、霞ヶ浦で浮力ガスや各種消耗品の補充をしたが、そのときの費用25万ドルの大半は浮力ガスと燃料の代金だったそうだ。
剛性の問題については、全体をブロック構造にして、それぞれに必要十分な浮力を与え、それを柔構造のジョイントで接合して風の影響を吸収するのはどうか? 要するに複数のハイブリッド型飛行船を繋いで1つの構造物とするわけだ。これを連環の計といいます。いかん、孔明の罠だ! まあ成層圏で火計はないから大丈夫だと思うよ? ミッソー! ミッソー! ミッソー! ←酔っ払いついでにR-360でアフターバーナーやったときは死ぬかと思った。
ということで、赤道上空20kmにハイブリッド型飛行船を複数連結した構造物を浮かべたぞ。
これでどうにか成層圏プラットホームの土台になる構造物を空中に浮かべたわけだが、これを航空機の発着場にする場合、技術的に大きな問題に直面せざるを得ない。
それは後流だ。
航空機に限らず、物体が空気の中を移動するとその後方には複雑な空気の渦が発生する。いわゆる乱気流というやつだ。固定されている物体に対して空気が動く、つまりは風、でも同じことで、高層ビルで問題になるビル風というのがそれに当たる。
この乱気流は飛行時には抵抗として働くだけでなく、その後方を飛行する物体に対して様々な悪影響を与えるものだ。
航空母艦を例に取ると、理着艦時の航空母艦は風上に向けて全速力で航行するが、このとき風を切る艦橋が強い乱気流を巻き起こす。さらに通常型空母だと煙突からの排気も加わわる。これらは複雑な乱気流を引き起こし、航空母艦後方に接近した艦載機の着艦姿勢を乱し、最悪の場合は着艦に失敗して大きな事故となる。現在の艦載機は自重が10トン以上あったりするので影響は少ないが、昔のプロペラ機ではこの乱気流に巻き込まれて操縦不能になり墜落という深刻な事故になるケースも少なくはなかったのだ。
で、後流は構造物が大きければそれだけ大きな渦となる。大型の航空機では、単に風を切ることによる乱気流だけでなく、翼端から翼端渦と呼ばれる巨大な渦を発生させる。これは大きな抵抗となって航続性に影響を与えるので、近年は長距離を飛ぶ大型機にはそれを軽減するウィングレットという小翼が取り付けられているものが多い。そして、翼端渦は大型機の後方に位置する航空機に対しては乱気流となって襲い掛かる。後方にいるのが同様に大型の機体であればそれほど影響はないが、これが軽飛行機などの小型機では操縦不能による墜落の危険があるのだ。
成層圏プラットホームもおそらくその巨大さ、現有の航空母艦より大きくなると思われるから相当な後流が発生することが予想される。成層圏の空気が薄いといっても、他の航空機に対してその影響は大きいだろう。空気が薄い分揚力も低下しているわけだし。
こうなると、大型の輸送機はともかく、無動力で滑空しかできないタイプの往還機では後流に巻き込まれたときの立て直しが難しいため収容は相当困難だろうと考えられる。十分な動力と姿勢制御が可能な翼がある往還機であれば、CCVなど電子的な姿勢制御技術が発達している現在なら収容可能だろう。収容方法にもよるが。
収容方法だが、まず考えられるのが空母と同じように航空甲板を用意する方法。これはすっげー面積が必要になる代わりに、整備やペイロードの積み替えが比較的楽にできる。カタパルト射出にすればかなりの大重量までイケル可能性は高い。電磁カタパルトなんかいいかもしれない。次世代の米海軍空母に採用される予定だし。
ただ、これの欠点は、着艦する航空機や往還機の重量まで成層圏プラットホームが背負わなけりゃならないってとこだな。予備浮力を十分用意できるか、できたとしても重量の変化によって高度が頻繁に変わるのはあまりよろしくない。高度調整で浮力ガスをあんまり放出しちゃうと補給が大変だしね。固定翼の揚力でも高度を調整できるが、これには速度の上下が必要だから、静止という点であまりよろしくないね。
あと、着艦する機体が後流に影響されやすいというのもある。一番懸念しなけりゃいけないポイントだ。
長大な飛行甲板をどうやって保持するかってのも難点だね。甲板がぐにゃぐにゃじゃあ着艦したくてもできなくなる。プラットホームに柔軟性を持たせられないと構造が破壊されやすいし。
他の収容方法としては、成層圏プラットホームからブームを出して、それに航空機や往還機を引っ掛けるという方法もある。戦闘機の空中給油をイメージすると分かりやすいだろう。後流から離れたところで引っ掛けて、固定したら近くまで引っ張り上げれば後流による不安定はほぼ解消できるだろう。重量の点でも、翼を持っている航空機であれば、その揚力を利用できるから、プラットホームの負担は大幅に減少するはずだ。飛行甲板は整備用など最小限でいいから、プラットホームの剛性の問題も出難いだろう。大気圏再突入直後で高温になっている往還機を直接載せなくてもいいのは便利かもしれない。
しかし、この方式はペイロードの積み替えや整備は難しいと思われる。旅客ぐらいならなんとかなるだろうが、大容積貨物を地上から来た航空機と往還機の間で積み替えるのは至難の業だ。万一落っことしたらエライ事故になる可能性がある。整備もやり難い。往還機は1往復ごとに整備が必要になるだろうが、それを成層圏プラットホーム上で十分にできないようであれば、毎回地上におろさなければならないので、成層圏プラットホームの意味がなくなってしまう。整備回数が減らせるようになれば大きな問題にはならないだろうが。この辺りはテクノロジーレベルの設定しだいか。
それと、結構問題になると思われるのが、往還機が成層圏プラットホームと速度をシンクロさせられるかどうかという点だ。前述のように成層圏プラットホームは時速200kmぐらいの速度しか出ない。一般的なプロペラ機の巡航速度としても遅い方だろう。プロペラ機時代末期の豪華旅客機ロッキードコンステレーションですら巡航速度が525km/hなのだ。
しかし、往還機はマッハの領域で飛行するものなので、これをプラットホームと同等の速度まで落とすと間違いなく失速する。根本的に翼や機体の構造が低速には馴染まない。これにプラットホームと同程度の速度で飛行できる翼をつけると、マッハ領域では確実に破壊されるし、仮に破壊されないとしても、宇宙では巨大なデッドウェイトになってしまう。
ということは、大きな速度差がある機体同士をすれ違いざまに接続するという技術が必要になるわけだ。フルトン回収システムの転用でなんとかなるかな。検討が必要だろう。とりあえず、収容を一発勝負にしないためには、往還機側に動力があって帰還時にも大気中を一定時間自由に飛行できるようにしておく必要がある。
これを解決するために、往還機を亜音速域で飛行する母機で射出回収する方法が考えられる。プラットホームへの収容は母機と一緒。これは技術的には悪くない、が、これなら地上から母機に載せて飛ばせばいいということにもなるので成層圏プラットホームの存在意義的に問題かもしれない。てかさ、元々は母機を常に成層圏に置いといたほうが都合よくね? から発展して成層圏プラットホームになっているわけだから、やっぱり親子式は棄てるべきだろう。
でも、飛行甲板だと空母と絵的に変わんないよねえ。甲板作業員が風圧で殉職しそうだ。
それじゃあ、成層圏プラットホームの速度を亜音速域まで上げられるようにして、通常は成層圏で静止、往還機の回収時は加速することにしようかね。一定範囲内を楕円(陸上競技のトラック的な)を描くように飛行してるのでもいいか。亜音速で。速度が上がれば揚力に余裕ができるできるから、重量物の積載もできるだろう。
問題は、現在のプロペラ機では亜音速飛行が難しいことだ。機体が700kmを超えた辺りでプロペラブレードの先端が音速を突破しちまうのだ。後退角付きプロペラを推進式に配置すれば、理論的にはプロペラ機での水平音速飛行も可能なんだけどね。効率はあんまりよくないみたいだが。かといって、ジェット機関は燃料補給の問題があるからあまりよろしくない。いっそ原子力ジェットか? まあ後退角付きプロペラが妥当なところか。
往還機の回収はフルトンシステムの改良型かな。速度が同期できるなら、プラットホームから空中給油機みたいなブームを延ばして掴むというのもアリか。
成層圏プラットホームの仕様はこんなとこだろうか。
次はこれ用の往還機について考えよう。
※ようこそ、リネ2の人々よ。テオン板で宣伝したおかげで見に来る人が飛躍的に増えましたね。でもね、コメントを書けとまでは言わないけど、リアクションぐらいしてってもバチは当らないと思うのよ? クリックするだけだし。
※リネ2関係で来る人向けに、傭兵哀歌の裏設定をちょっと書いておくよ。パルチザンのアジトはアデン王国のど真ん中で孤立しているんだけども、なんで傭兵に高給を払えるんでしょうね? 口約束だけで実際は払わないという考え方もあるんだけど、こういうことするとすぐに噂として広がるから新規の応募者がいなくなってしまう可能性が高い。酔っ払いを騙してサインさせるとかじゃないと。
じゃあ、実際に払っているとして、どこからアデナが供給されてるんだろうか? キャッツアイが近隣から略奪をしているという話は出てくるけど、これで賄い切れるとはハヤカワさんは思っていない。
さてそれじゃホントにどこから?
ハヤカワさんの想像ではドワーフ族の「天秤のギルド」が資金提供をしていると思うのだよ。天秤のギルドは、アデン王国と商売をしながら、裏でグレシアと通じていて、戦争でどちらが勝ったとしても利権を握れるように、さらには戦争を長期化させることによって商売を増やそうとしているわけだ。でも、アデナはともかくグレシアから兵士を輸送することまでは難しい。
だから、パルチザンのアジトでは資金はあっても人員は足りないという状況になっているんだね。
ちなみに、パルチザンのアジトに出入りしているドワーフの商人は個人でやっている振りをして、実は天秤のギルドの上層部から指令を受けて派遣されているのだ。アレだね、エリア88のマッコイ爺さんみたいなもんだね。いや、どっちかってえとプロジェクト4か。だから雑貨だけじゃなく武器や防具も扱っているぞ。
最初はこの辺りのことも盛り込もうと考えていたのだが、長くなりすぎるのと本筋から離れてしまうことからカットした。その名残が若いオークが紙とペンを買いに行く場面なんだね。まあ、まるっぽ切ってもよかったんだけど、そのうちまた別の物語を書くときの伏線として残しておいたんだよ。
※昨日から体調がおかしいと思ったら、ちょっと風邪ひいたッぽい。更新が滞る可能性あり。←10/12
※先週から父親が入院中。
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